top of page

15. 特許出願と研究成果発表について

創薬標的科学研究室の研究には特許出願に繋がるものが多くあります。ほとんどと言っても過言ではないかもしれません。将来の研究成果の事業化のためには特許出願は必須です。学生の研究成果に特許性が認められた場合には、その研究成果を学外(学会など)で発表するのは特許出願まで待ってもらうことになります。そのため、学部生での学会発表は難しいと考えてください。修士課程では少なくとも1回、理想的には2回、学会発表してもらいます。これについては国際学会になる可能性もあります。卒論発表などの学内発表に関しては、発表会参加者全員が守秘義務契約書に同意した上で行うことができます。

特許の発明者については基本的には喜井となります。裁判所の一般的な考え方は、特許法にいう発明者について「真の発明者(共同発明者)といえるためには、当該発明における技術的思想の創作行為に現実に加担したことが必要である。」とされています1。したがって、学生が当該発明における技術的思想の創作行為に現実に加担したのなら、共同発明者となりえます。具体的には、喜井の指示や示唆とは無関係に学生自身が自分で考えて実行した実験の結果により、当該発明の価値が向上した場合です。つまり言われたことだけやったのでは発明者にはなれません。

2020年度中に出願する予定の特許では、学部4年生の古家君が共同発明者となっています。この発明は彼が学部3年生で行なった実験の結果が中核です。彼は私に、こうした方がいいんじゃないか?と提案してきました。それまで多くの反応条件の検討を行なっていましたが、一つまだ手をつけていないところがあったことに、私は気付かず、古家君は気がついたのです。彼はその部分についても検討を重ね、最適条件を発見し、それによって本発明の汎用性と価値を大きく向上させました。

共同発明者としての貢献度については、特許出願時に第三者(信州大学URAや信州TLO)の立会いのもとで決定します。その際、共同発明者である学生は、自分がどのように当該発明に貢献したかを証拠(実験ノート)とともに論理的に説明する必要があります。そのため、実験ノートには、どの部分が喜井からの指示や指導で、どの部分が自分独自のアイデアなのかを明記しておく必要があります。ただの実験の記録ではなく、証拠書類となることを肝に銘じてください。その貢献度に応じて、特許が事業化に結びついた場合には報酬が分配されます。

喜井が事細かに全て指示してしまうと、学生は発明者になりえません。当研究室に配属する学生には、是非とも共同発明者になり得るだけのアイデアを独自に考え出して欲しいのです。そしていつか、ボス(喜井)は何にも考えてない、わかってない、ボスいらない、と明言できるようになってください。そうなったら君はどこに行っても大丈夫です。

SET-BL-J-002V.png
bottom of page