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信州大学 農学部/大学院農学専攻 創薬標的科学研究室
Laboratory for Drug Target Research, Bioscience and Biotechnology, Faculty of Agriculture, Shinshu University
13. 強みを生かしてください
Strength-based approachという考え方があります。ピーター・ドラッカーのマネジメント哲学の1つであり、弱みではなく、強みに力点をおいた活用が重要であるとの考えです(1)。
学生のみなさんは将来の仕事を選ぶ際にどのような基準を考えていますか?(1) 好きなことを仕事にしますか? 何かどうしてもやりたいことがありますか? 給料が良い仕事ですか? 地位や名誉を重要視しますか? 私からの一つのアドバイスは得意なことを仕事にするです。そうすれば他の人よりもその仕事が苦労なく高いレベルでできます。もしどうしてもやりたいことがあった場合、何か到達したい目標があった場合、かなり頑張ることが必要ですが、これには頑張ってくださいとしか言えません。
好きなことは容易に嫌いになることがあります。しかし、得意なことが突然苦手になることはほぼ起こりません。好きなこと、やりたいことが得意なことと一致すれば素晴らしいことです。しかしそんなケースはそう多くはありません。
私の場合、今の仕事は比較的得意だと思います。しかし大学院生の頃にやりたいなと思ったことは今出来ていません。それは新型の顕微鏡を自作することでした。当時は光の回折限界を超えた解像度を実現する超解像顕微鏡の研究開発が世界中で始まりつつあり、新しい技術が発表されるとワクワクしながら論文を読みました。知り合いの研究者が光学除振台(わずかな揺れも抑える専用実験台)の上にレーザーやミラー、レンズを設置して、新しい光学系で細胞のイメージングをやっているのを見て、カッコいい! 自分もやりたい! こういうの大好き! と思っていました。しかし、絶望的に能力が足りませんでした。光学・物理学の言わんとすることには全くついていけませんし、複雑な計算式を見ると脳がショートしました。ああ、これは向いていないな、と泣く泣く諦めました。しかし実は、ここ数年この超解像顕微鏡の研究開発の共同研究を行なっています。私の強みである生物学を生かし、物理系の共同研究者が開発した新しいコンセプトの超解像顕微鏡を生物へと応用する研究開発に少し関わったりしています(1)。実物の自作顕微鏡を見せてもらうと今でもワクワクします。部品は町工場で削り出して作ってもらっていると聞くと、すげーっと思います。ああ、やっぱりこういうのが好きなんだなと実感する瞬間です。しかし自分でやろうとは思いません。下手の横好きですし、まず収入を得られるような仕事にはならないでしょう。大学生ぐらいの時に気がついていたら、もしかしたら仕事にできたかもしれませんが、今のちょっと関わるぐらいでちょうどよかったかなとも思っています。
誰しも何かしらきっとある程度得意なことはあるはずです。自分の得意なことは何かを考えつつ、もしくは他の人に教えてもらいながら、自分の将来を選択するのも一つの良い方法だと思います(1)。
「自分が研究に向いているかどうかを知る23の質問 ~プロの研究者になるために必要な素養とは? 進路に迷っている人のためのチェックリスト~」(1)なるものもありますので、興味があればチェックしてみてください。個人的にはちょっとハードルが高過ぎるとは思います。
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