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9. 学び続ける姿勢を求めます

理系の教育現場では最新の科学や技術についての教育が奨励されています。これは社会に出て企業に就職した際になるべく早く戦力として活躍してもらうためでもあります。しかし昨今の技術の発展速度(AIの登場やナノテクノロジー新技術など)を勘案するに、最新と言われる科学や技術はあっという間に陳腐化します。

例えば、私の指導教官から聞いた話ですが、昔は制限酵素EcoRIは自分で何日もかけて精製していたそうです。今なら注文すれば1-2日で届きます。遺伝子をクローニングして配列を決定したら論文になっていた時代です。私が大学院生の頃は欲しい遺伝子はPCRクローニングしたり、プライマー配列を工夫して変異を導入したり、様々なテクニックを駆使して作製していました。今では欲しい遺伝子は人工的に合成できます。大体1bpあたり45円程度で8kbpまで合成してくれます。これで大体の遺伝子はカバーできてしまいます。さらにAddgeneというNPOは論文に発表されたプラスミドDNAを収集し、それを必要とする全世界の研究者に格安で配布するサービスを行なっています1。私が大学院生の頃(約20年前)は、DNA配列を決定するのに1 mぐらいあるゲル板を自作していました。私はこれを作るのが得意でした。今ではキャピラリーシークエンサーが使われ、私のゲル板作製能力は何の役にも立ちません。その当時、ヒトゲノム配列の決定に国家予算規模のお金が投資され、多くの科学者が参入しました。今なら10万円もあれば、1-2日でヒトゲノム全ての配列を決定できます1。装置もちょっと大きめのUSBメモリぐらいです。昔の生化学では、数百頭のブタの脳から数mgの目的タンパク質を精製して、活性評価や構造解析を行なっていました。今なら大腸菌の数L培養で簡単に作れます。大腸菌を使わず、試験管内でタンパク質を人工合成する手段すらあります1。昔は相同組み換えを利用してES細胞から遺伝子欠損マウスを苦労して作っていました(実体験です)。今ではCRISPR/CASによって受精卵で遺伝子欠損マウスを簡単に作れます。正直言って挙げればキリがありません。泣きたくなってきます。

​技術の発展は受け入れなければなりません。新技術の鮮度が落ちる速度は加速しています。少なくとも私が経験したここ20年では失速する気配はありません。では、そのうち陳腐化する技術を今学んでも意味がないと思いますか? そういう考えの方は研究者にはならない方が良いでしょう。科学技術に携わる人間は、新技術を学び続けなければならないのです。自分に周りに常にアンテナを張り巡らせ、情報をキャッチし、世界の発展に追いつき続ける必要があります。そしていつか自らの研究成果によってそれを追い越すことを目指すのが研究者です。

​研究者でなくとも常に学び続ける姿勢は様々な業種で必要とされています1。大学・大学院を卒業して社会に出た後の方が勉強することが増えることもあるでしょう(実際によく聞く話です)。

​昨今ではSNSなどで最新情報が発信されています。ほとんどの学術雑誌はTwitterで最新論文の情報を発信していますし、最新技術などの情報を取りまとめて発信するSNSはたくさんあります。これを有効活用し、効率良く最新情報をキャッチできるようになってください。

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