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7. 企業の求める優秀さとは主体的行動力やキャリア志向です

「生き残りのための優秀学生獲得戦略(著者:柳田将司)」という本があります1。この中に「(2)外的要因による優秀学生数の減少」と題されたセクションがあり、そのすぐ後に「学生の安定志向が強まり、キャリア志向や主体的行動力を持った人材が減っている。」と書かれています。ここには学力や頭の良さなど書かれていません。

 

経団連が行なった「高等教育に関するアンケート結果」でも、企業が学生に求める資質・能力の1位は「主体性」です1。その後に「実行力」と「課題設定・解決能力」が続きます。

ところで、なぜ企業がこのような点を学生に求めると思いますか? どうしてこういった学生を欲していると思いますか? 別に就職した後に指導してこういった能力を付与すればいいと思いませんか? 主体性や実行力は学生本人の意識次第な面がありますが、課題設定・解決能力は指導によってなんとかなると思いませんか? この理由を少し考えてみてください。

 

「課題設定・解決能力」は研究活動そのものです。これには高い論理性と思考力が必要です。この高い論理性と思考力は、ルーチンワークでは決して磨かれません。解決困難な課題に取り組み、その実践の中でしか培われないものです。答えのない問いに対しての姿勢そのものです。つまり、この能力を磨くためには、利益につながらない可能性の高いことに取り組む必要があり、それは企業では困難な場合が多いのです。

「主体性」と「実行力」については、これは上述のキャリア志向と関連してきます1)。キャリア志向の強い人(キャリアアップ、年収アップ、地位と名誉アップなど)は、主体的かつ積極的に活動します。他人を押しのけてグイグイ進みます。発言するのに遠慮なんかしません。多くの学生はこういう態度はウケが悪い、協調性が低い、周りのことを考えてない、とか思っているでしょう。真逆です。何も積極的に発言しない人は、もっとも協調性が低いです。上司の目線で考えてください。誰がもっともその仕事に貢献していますか? 誰がその上司を含むチームに対して協調的ですか? 自分の周りの同じ立場の同僚だけに対して協調性が高いことと勘違いしていませんか? これは協調性とは言いません。同調圧力というのです。この二つを混同しないでください。

「協調性」について追加しておくと、この意味は「互いに協力し合うこと。特に、利害や立場などの異なるものどうしが協力し合うこと。」です。大学生では、利害や立場などが異なるものどうしが協力し合うことなどほとんどないでしょう。上述の場合、利害と立場の違う上司と部下が協力し合っているから協調的と判断できるのです。利害や立場が同じ人間同士が協力するのは当たり前で、協調性など関係ありません。あなたは利害や立場が異なる他人と協力し合えますか? 利害や立場が最初から対立している状態からコミュニケーションによって調整したことありますか? コミュニケーション能力とは、このような利害や立場の異なるもの同士を結びつけて調整することだと知っていましたか?

当研究室では学内外との異分野共同研究を通じて、この協調性を培ってもらいます。利害や立場の異なる喜井や研究員・技術補佐員との協力や、異分野の共同研究者とのやりとりや交渉などがそれに当たります。対外的なものは失敗すると取り返しがつかないこともありますが、先方も学生だからと最初は許してくれます。喜井がフォローアップしますが、可能な限り学生主体で動いてもらいます。

 

また課題設定・解決能力については、創薬標的科学研究室では、Issue drivenの考え方を基本に指導しています1。研究室配属前に是非勉強してもらいたい内容です。

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