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6. 学生には「必死に」主体的に研究活動に参加することを求めます

 

創薬標的科学研究室に「教えてもらう気分」で来るのはやめてください。どこの大学のどんな分野でも研究室というのは主体的に参加するところです。お客様気分で「受け取るだけ」の態度はやめましょう。このような態度では到底何かを得ることなどできません。

​学生という言葉の定義は、学業を修めるものです。高校生などは生徒と呼ばれ、学校で教育を受けるものと定義されます。大学生は、学生であり、学業を修めるものであることをしっかりと認識してください。

研究室というのは、自分の頭で考え、それまでとは違う世界を自分の力で切り開いた時にこそ、配属した意味が最大限になる場所です。研究や実験のノウハウを教えることはできます。ただそれは自分でそのノウハウに辿り着くこととは全く意味が違います。喜井があまりとやかく言わないのは、学生自身で辿り着いて欲しいからです。そして辿り着いた学生はきっと必死に考えたはずです。その経験が自らの価値を高めます。

​私が学部4年生で研究室に配属された時の最初の仕事は、あるプラスミドDNAを作ることでした。制限酵素でカットして、リガーゼで繋ぐだけです。半年近くうまくいきませんでした。悪戦苦闘しました。たった1つのプラスミドすら作れない。毎週同じことを繰り返しました。制限酵素のカタログを読んで使い方を勉強しましたし、英語のCurrent Protocols in Molecular Biologyも頑張って読みました。先輩や助手の先生にも実験を見てもらいました。それでもうまくいきませんでした。酵素がダメなんじゃないか、元のプラスミドDNAがダメなんじゃないか、アガロースゲルがダメなんじゃないか、リガーゼがダメなんじゃないか、挙げ句の果てには場所がダメなんじゃないか、いろんな責任転嫁をしました(誰も取り合ってくれませんでしたが)。無駄にした試薬は数知れずです。しかし、ある時突然できるようになりました。理由はわかりません。強いて言えば、うまくなったから、でしょうか。今ではプラスミドDNA作製は、私のもっとも得意な実験の一つになり、誰にも負けない技術です。

​教えられただけでは絶対に将来成功しません。もし成功するなら、世の中は成功者で溢れているはずですし、自己啓発系などのなんとかセミナーなるものが乱立してもいないでしょう1: 堀江貴文氏も必死に主体的に参加して欲しいと言ってます

 

不幸なことに、学生は教えられることに慣れきってしまっています。高校生活の延長のような感覚でいる学生も多くいます(そういうのはただの生徒で、学生とは呼びません)。当研究室への配属を希望する学生には、まずこの考え方を修正してもらいます1

大学教育での主体的学修なる言葉やアクティブラーニングなるものが最近幅を利かせています。それだけ今の研究室配属前の教育には問題があるということです(まあ問題のない教育は問題だらけの気もしますが)。

 

研究室配属後の大学教育は、配属前のそれとは全く異なるものであることを認識してください。教員にとっては教育と考えるべきですが、学生はそれが教育とは思わない方が良いでしょう。私が学部生の頃、修士課程の先輩は研究室を部活と言っていました。

 

研究室での研究活動(教育という言葉は使いません)は学生の将来にとって絶対に必要であると私は確信しています。主体的に動くことのできない学生を社会や企業は必要とするでしょうか? その辺りをよく考えてみてください1

​研究室というのは主体的に参加する方が絶対に楽しいです。更に言えば、運営する側の方がより楽しいです。運営といっても、もちろん教授と同じことをする訳ではありませんが(教授には研究費をとってくるという超大事かつストレスフルな仕事があります)、それでも研究室のルールを決めたり変えたり、研究テーマの方向性を考えたり、チーム編成したり、席決めしたり、イベントを企画したり、後輩を指導したり、新しく導入する機器を選定したり、値切ったり、新しい技術を導入したり、買ってた試薬を自作したり(喜井は得意です)、他の研究室と共同研究したり、共同研究先の研究者に結果報告したり、打ち合わせの出張したり、などなどいっぱいあります。ただ論文読んで実験やってデータを出して発表するだけが研究室ではないのです。自分の色に変えていけば良いのです。当研究室は毎年カラーリングが変わる研究室でありたいと思っています。先輩のカラーが強く出ることもあるでしょう。その場合は喜井に直談判してください。混ぜるな危険シールを貼ります。学生全員のカラーを均一になるまで混ぜたいとも思いません。マーブル模様でいいのです。喜井はなるべく白っぽい背景色でありたいと思っています。そして多くの他研究室は同じように考えていると思います。それが大学の研究室というものです。

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